【脊損についての医療的知識】脊椎と脊髄について

更新日:2021年3月4日

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脊椎(せきつい)と脊髄(せきずい)について  脊損ケア手帳(平成19年3月31日発行)3ページ

脊椎と脊髄は異なります。骨と神経の違いです。

脊椎と脊髄の関係は次ページの[図1]で、脊椎の詳細は[図2]で、脊髄の詳細は[図3]で、図示しています。

背骨(脊柱)は体重を支えるとともに身体を動かす必要があるので、こぶし大の骨(脊椎骨)が26個積み木状に連なって形づくられています。[図1]

その脊椎骨の中程には脊椎孔(せきついこう)[図2左]という空間があり、脳から続く管(チューブ)状の中枢神経が縦に通っています。これが脊髄で、管の中は脳脊髄液で満たされ、人差し指ほどの太さの脊髄神経の本体が浮かんでいて、その中心管[図3左]にも脳からの脊髄液が流れています。

脊椎(脊柱・背骨)は、頚椎(けいつい=首=7個)、胸椎(きょうつい=胸=12個)、腰椎(ようつい=腰=5個)、仙椎(せんつい=骨盤=5個、ただし形状は仙骨として1個)の4つの領域に区分けしています。全体の総称が「脊椎」です。

脊髄も、4つの領域に区分けされていて、それぞれ頚髄(けいずい)・胸髄(きょうずい)・腰髄(ようずい)・仙髄(せんずい)と呼びます。全体の総称が「脊髄」です。

脊髄には、手足で受けた刺激を脊髄から反射的に直接筋肉にはねかえす脊髄反射[せきずいはんしゃ=カッケの検査に使われる膝蓋骨=しつがいこつ反射反応など]の役割があります。

なお、脊椎損傷だけでは骨の損傷なので末梢神経のマヒも脊髄神経のマヒも起こりません。末梢神経や脊髄神経が損傷してマヒが起こります。

脊髄と脳は神経細胞の集合体で、神経細胞からは情報をやり取りする神経線維が脳内や脊髄内を上下に伸びていて、感覚や刺激などの内外の情報を受ける受容器からの信号を受けて、判断処理して、それを筋肉などの効果器へ発信する働きをする役割を持っているので中枢神経系と言います。

この中枢神経系と皮膚・感覚器官・筋肉・腺などとを連絡する神経を末梢神経と言い、脳から出る脳神経と脊髄から出る脊髄神経があります。

末梢神経はその働きから、脳・脊髄から信号が出て行く側の遠心性神経と、脳・脊髄へ信号が戻ってくる求心性神経とに区別されます。

また、筋肉などを動かす運動神経と、触覚、位置、痛み、温度などの感覚を伝える感覚神経と、意思とは関係なく発汗機能、内臓機能、内分泌(ホルモン)機能の作用を管理して体調を整えるための自律神経の別があり、自律神経は、さらに、興奮させる働きの交感神経と鎮める働きの副交感神経に区別されます。

運動神経と感覚神経は、それぞれまとまって脊髄神経の(腹側の)運動神経根と(背側の)感覚神経根につながっています。[図3]

脊髄を損傷すると、損傷したところとそれより下位のこれらの神経系すべてに影響が及びます。

図1 脊椎と脊髄とその関係
脊柱の全景とその区分
この画像は脊柱の全景とその区分です。
図1 脊椎と脊髄とその関係
脊椎、脊髄およびその神経根の関係
この画像は脊椎、脊髄およびその神経根の関係です。
図2 脊椎骨の構造
胸椎骨の構造(第5胸椎)
この画像は胸椎骨の構造(第5胸椎)です。
図3 脊髄の構造と働き
脊髄横断面
この画像は脊髄横断面です。
中心管を囲んで網掛け(  )のH字形をした部分が灰白質、その周辺の白地の部分が白質です。
前根は運動、後根は知覚の神経線維でできています。
左右の前根と後根はそれぞれ一体化して、脊髄神経節で末梢神経の神経根になって脊髄の外へ出て行きます。
灰白質は神経細胞でできていて、その髄節位置の髄節を通じた入出路の神経情報を管理したり、髄節内部の機能的判断で神経反射を司っていたりしています。
白質は神経線維でできていて、脳と各髄節を直接結ぶ連絡路として脊髄内を上下に走っています。
図3 脊髄の構造と働き
脊髄伝導路
この画像は脊髄伝導路です。
  • 錐体側索路(延髄で交差して脳内では左右反転)
  • 錐体前索路(非交差性)
  • 前脊髄視床路(無差別触圧覚)
  • 外側脊髄視床路(温度覚、痛覚)
  • 脊髄延髄路内側部ゴル索
  • 脊髄延髄路外側部ブルダッハ索(共に、深部知覚と触覚)
  • 前脊髄小脳路
  • 後脊髄小脳路(共に、筋、腱、関節からの刺激を同じ側の小脳に伝えます)
  • 赤核脊髄路(錐体外路性の下行路)
※ いずれの伝導路も一定の経路を走っています

図1から図3は、脊髄損傷ハンドブック 改訂版・新地書房より

脊柱はしなったり動かせたりできるように、各脊椎骨と脊椎骨は組み合わさって関節になっています。そしてその間にはクッションの役割をする椎間板がはさまっています。この各脊椎骨の連結部(髄節=ずいせつ)で、脊髄は手足や内臓など全身に伸びる末梢神経に枝分かれしています。

髄節は31対あり、おおよそ、頚髄で手や腕の、胸髄で胸・腹部の、腰髄は 腰部や足の末梢神経につながっています。

そのため、筋力低下や感覚マヒなどの機能損失(神経の損傷)が体のどこに起きたかに着目すれば、どの脊椎・脊髄に損傷が生じたかを特定することができます。

表1 英語表記について
脊椎と脊髄の位置(レベル)を表示、呼称するのに、慣用的にアルファベットの頭文字を使います。ここでその説明をします。
脊椎と脊髄の各領域は英語表記の頭文字のアルファベット(それぞれC、T、L、S)で略記されます。
また、各領域の椎骨には頭側から番号が付けられていて、たとえば頚椎の1番上がC1、2番目がC2、胸椎の5番目がT5(ドイツ語表記ではTh5)、腰椎の3番目がL3と表記されます。
  • 脊髄損傷全体はSpinal-Cord-injury(スパイナル・コード・インジュリー)
    略してSCI(エスシーアイ)
  • 脊髄損傷を含む身体不随やマヒのことをParalysis(パラリシス)
  • 頚髄損傷(頚損)は、四肢マヒから=Quadriplegia(クアドラプレジア)
    略してQuad(クアド)
    クアドには四肢マヒ(全身性障害者)の脳性マヒ等を含む
  • 脊髄部位の略記法
    • 頚はC=Cervical(サービカル)
    • 胸はT=Thoracic(スォーラシク)
      [時にドイツ語のTh(テーハーと読む)と表記]
    • 腰はL=Lumbar(ランバー)
    • 仙はS=Sacral(セイクラル)
    • 尾はCo=Coccyx(コクシクス)
    • 脊髄は脊椎より短いため,脊椎と脊髄の区分レベルは下位ほどずれます。
    • 椎体と髄節に同じ(C、T、L、S)を使っていることが、損傷レベルが混同される原因になっています。
      日本では損傷脊椎部位として英語表記しますが、欧米では健在髄節部位として表記するので、スポーツの残存能力判定等で誤解が生じています。
      T10との表記は、日本では普通は第10胸椎損傷のことで第2腰髄からマヒしています。欧米では第10胸髄まで健在していることを表して第6−7胸椎損傷に該当します。頚髄損傷においても同じようにずれています。
      日本では残存髄節について特に○○番髄節残存と表記します。

※ 各髄節から枝分かれしている末梢神経についても、1番上の頚椎骨(第一頚椎骨=C1)の上、第1頚椎節(つなぎ目の意)から出ているのをC1(第1頚髄神経)、第7頚椎の下、第8頚椎節から出ているのをC8(第8頚髄神経)と番号が付けられています。

胸椎・腰椎・仙椎については、頚椎と異なり各椎骨とその下から出てくる神経の番号が一致し、各椎骨の下から、胸椎ではT1からT12、腰椎からはL1からL5、仙椎からはS1からS5の各神経が出ています。

図4 脊髄の主な髄節支配域と関係する感覚と動作能力
障害高位診断の知覚・筋力・反射の簡易図
この画像は障害高位診断の知覚・筋力・反射の簡易図です。

※ 向かって左側が感覚の領域と、向かって右側が運動の領域と各髄節の関係を表示しています。なお、この図ではTをThと表記

向かって左側と体幹の色分けは、各髄節領域の区分けで、Th4は文字表記の下、乳頭の上の真横に一文字の網掛け部分を、L1鼠径部は文字表記右下の斜めの網掛け部分です。

文字で位置がわかるものについては網掛け表示していません。

図中の矢印は、各関節や筋肉の動かせる方向を示しています。

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このページの作成所属
福祉部 障がい福祉室地域生活支援課 地域生活推進グループ

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